*正しい姉弟の切愛事情*



手で届きそうな距離までくると、切なげな表情を崩さないまま、瑞貴は立ち止まった。
 

まるでデジャヴだ。


「もう一回――」


あまりにもまっすぐな視線に、思考がすべて奪われる。


「していい?」

「え……?」


なにを――


「イヤだったら、拒んで」 



言いながら、瑞貴は私の髪に触れた。 


少し冷えた指先が、耳をかすめて――
 

私は動けないまま、ただ近づいてくる瑞貴の顔を見ていた。


長いまつげ。


大きな黒い瞳がまぶたに覆われて、そして、


重なる唇――



「――」