「大丈夫」 胸のしこりが取れたように、私は笑った。 瑞貴だって、姉弟でギクシャクしてるのは嫌だよね。 「平気平気、事故だと思って忘れるから、瑞貴も忘れなよ」 そう言った途端、広くて細い背中が震えた。 「…らんねぇよ」 「え?」 向き直った瑞貴の顔には、ひどく苦しげ表情が浮かんでいて、私は言葉を失った。 「一歌」 名前を呼び、ゆっくり近づいてくる。 取り残されたバッグの紐が、音も立てずに床に落ちる。 まっすぐ見つめられ、動けなかった。