「え……?」
振り返ると、階段の前で立ち止まったままの背中が見えた。
両手をだらりと垂らしたまま、手にしたバッグは床にひきずっている。
そして、背中を見せたままの瑞貴はつぶやいた。
「今朝の……ごめん」
「う……うん」
いつの間にか成長して広くなった背中は、やっぱりどこか細くて頼りない。
なんだ、と思った。
なんだ、瑞貴もやっぱり気にしてたんだ。
前言撤回。
今朝のはきっと何か衝動的な出来事で、特に意味があったわけじゃない。
普段尖ってるくせに、こうやって謝ってくるなんて、かわいいところもあるじゃないか。


