「いたた……」 「ちょ、大丈夫?」 「はい……。なんでしょかユリさん」 涙目になりながら顔を上げると、ベランダの入り口に立ったユリと目が合った。 「どうしたのボーっとして。さっきから呼んでるのに」 「いいえ、別になんでもないんです」 「その敬語も変だし」 「そうでスか?」 「……」 怪訝そうに私を見つめ、ユリは後方を指差した。 「石川くんが来てるよ」 指された方に目を向けると、 綿毛みたいなふわふわ頭の彼氏が、教室のドアに体を預けてこちらに手を振っていた。