本来なら私がやらなきゃいけない憎まれ役をエリカちゃんに押し付けておいて、 弟の苦しむ顔を見たくないなんて思ってる。 わがままだ。 でも、自己嫌悪に陥ってる場合じゃない。 そんなの、あとでいくらでも気に病めばいい。 今はちゃんと、見届けないと―― 「不利になったから逃げ出すなんて、子供と同じよ」 挑発的な言葉に、弟が振り返る。 眉間にくっきりと皺をよせて、 「うるせーな! 外野が口出しすんじゃねーよ!」 低い叫びがリビングを震わせた。