*正しい姉弟の切愛事情*



「図書館の入り口に展示されてたのをいくつか借りてきて。まだどれにするかは決めてないけど……」
 

本を受け取ってタイトルを眺める。


「へえ、展示なんかされてたんだ。気づかなかった」
 

近くにある市営の図書館は大きくて綺麗だから、中学の頃から活用してる。


「ねえ一歌」

「ん?」
 

目を向けると、ユリは心なし困ったように微笑んだ。


「このあいだ、瑞貴君と図書館に……いた?」

「え……? う、うん」
 

夏休みに入ってから、瑞貴と何度か図書館に出かけていた。
 
ずっと家の中にいるのも退屈だし、図書館くらい姉と弟で行っても変じゃないと思ったから。
 
それでも改めて訊ねられると心臓が鳴ってしまう。
 

まさか、変な噂が流れてるんじゃ――