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部屋の中は空調の利いていて過ごしやすい。
私の後ろでは水玉模様のベッドに細い身体を投げ出してエリカちゃんがクマのぬいぐるみをいじっていた。
座卓を挟んだ向こう側では、ユリがコップに麦茶を注いでる。
英語の宿題をやっつけに来たのに、やわらかな雰囲気だったはずのユリの部屋はどことなく空気が張り詰めている。
「しゅ……宿題、どれ終わらせた?」
漂う緊張感をほぐそうと口にするとユリが顔を上げた。
「数学と、現社のレポートと……感想文の本は借りてきた」
「え、何読むの? あたし、どれ読むかまだ悩んでて」
身を乗り出すと、ユリは立ち上がって机に積まれていた本を持ってきた。


