「瑞貴君、もう怪我すんなよ!」 「うるせえ、アホ久保」 「こ、こら瑞貴! す、すみません」 頭を下げると、久保さんは鷹揚そうに笑った。 「いえいえ。じゃあ、お気をつけて」 「……はい」 石段を降りて瑞貴のそばまで歩く。 振り返ると、久保さんはにっこり笑っていた。 「さようなら」 その大きな笑顔に心臓が鳴る。 ――うまいもんでも食べて、元気だしてください―― いつか掛けられた言葉が脳裏をよぎって涙がこみ上げた。