「――好きに、なっちゃったじゃない」 もう自制できないくらい、 私は―――― 手の中から瑞貴の両手が滑りぬけ、気が付くと大きな腕に抱きしめられていた。 Tシャツの肩に顔を埋めて、そのぬくもりに身を任せる。 瑞貴の匂いと、薄くて硬い胸の感触。 ここに、ずっと触れたかった。 また涙が込み上げてきて、私は目をきつく閉じた。 「一歌――」 耳元に触れる透明な声。 「――好きだ」 それはきっと、 感情を揺さぶって、 幸福に満たされる、 魔法みたいな言葉に違いない。 ――普通ならば