焦って目を逸らすと、今度はクスクスと笑い声が聞こえる。 「冗談だよ」 言いながら瑞貴は空になったお弁当箱の上にお箸を置いた。 「ごちそうさま。うまかった」 席を立ち、ソファに置いていた鞄を肩に引っ掛けて階段を上がっていく。 2階に消えていく細い背中を、私は胸に手をあてたままじっと見送ってしまった。 胸の底でばくばく響く心音が、耳の後ろで大きく反響しているみたいだった。