顔の両側に伸びた細い腕。
囲うように壁に手をついたまま、眉間にシワを寄せ、私を睨みつける。
形のいいその唇は、小刻みに震えていた。
何か言われるのかと思って待っていても、一向に言葉は落ちてこずに、降り注ぐのは強い目線だけ。
まるで刺し貫かれてるみたいに、胸がじりっと痛む。
固まった空気の中、弟はやがてきつく目を閉じ、顔を伏せた。
少し長めの黒髪がさらりと流れ落ち、その表情を隠す。
私から離れると、無造作にスニーカーを脱ぎはじめる。
框(かまち)に上がり、瑞貴は背中を見せたまま立ち止まった。
だらりと落ちた両腕が一瞬、強くこぶしを握る。
そして落とされる、
「……ああいうの」
震えた声――
「やるんなら……俺の、見えないとこでやって」


