*正しい姉弟の切愛事情*


 ◇

迷うべくもない。

私の彼氏は石川君で、瑞貴は大事な弟だ。



弟は、恋愛対象には――


――なり得ない。





 
一日の授業から開放された生徒たちがここかしこに溢れる。

午後の日差しが窓から斜めに切り込む廊下を、まっすぐに歩いていった。


目指すは9組の教室。 


教室のドアから流れ出てくる生徒たちをやり過ごして、教室内を覗く。

ふわふわ頭の彼氏は窓際の男集団の中で健やかに笑っていた。


声をかけるには微妙に遠い距離。


どうしようかな、と悩んでいるうちに、集団の中の1人がこちらに気づき、「おい、彼女」というふうに石川君の肩を叩いた。