鍵はついていないから、少し軋んだ音を立てるだけでドアはすんなりと開いた。 目の前に広がるのは男の子っぽく、乱雑に物が置かれた部屋。 正面に、ヘッドフォンをつけたまま机に向かっている弟の後姿があった。 「瑞貴」 ドアの傍に立ったまま声をかけると、瑞貴は驚いたように振り向いた。 大きな目が見開かれたかと思えば、次の瞬間には眉間に皺が寄る。 「勝手に入ってくんじゃねーよ!」 凄い剣幕で怒鳴られて思わず身を引く。 「ご、ごめん」 そんな私を見て、瑞貴はヘッドフォンを外し小さくため息をついた。