「もう、どうしようもない会社でさぁ。非人道的すぎるから辞めてやった。というわけで出戻りの転職活動組でーす」
「ひ、非人道的……?」
「へへ」
ぺろっと舌を出して笑う彼女は、仕事を辞めたというときでも悲壮感の欠片すら漂っていない。
いるだけでその場が華やかになる。
ユリが癒しの一輪花なら、エリカちゃんは豪華絢爛な花束だ。
「それよりも一歌、しばらく会わないうちに綺麗になっちゃって!」
静かにお茶を飲んでいるユリの横で、エリカちゃんは親戚の子供をからかうように私の頬をつまむ。
「白状しなさい! 彼氏ができたんでしょー?」
「もう、エリカちゃんてば」
じゃれ付いてくる彼女を笑って押しのけようとした瞬間、形のいい唇から思いもよらない言葉が落ちた。


