「ちょ、瑞貴」
二階の廊下で、弟は私を壁に押し付け被さるように唇を重ねる。
一階にいるお父さんに気付かれることを恐れて、私は強く抵抗できなかった。
それを分かっているのか、瑞貴はもう何回目になるのか分からないくらい、不意をついてはキスをする。
その回数は、もうきっと、石川君とよりも多い。
「やめ」
顔を逸らそうと思えば逸らせるはずなのに、瑞貴を押しのけようとその胸に置いた自分の手はいかにも弱々しい。
「み――」
瑞貴は私の右手を掴み、壁に貼り付けようとでもするみたいに、きつく、強く、唇を合わせる。


