それでも緋月ちゃんは、首を振り続けた。


「いや、ですっ!私・・・真夜中じゃないと、駄目なんですっ!」



健一さんと顔を見合わせた。


何が、真夜中じゃないと駄目なの?



緋月ちゃんは、首を振り続けるのを止めて、静かに言った。


「・・・・・・すみません。でも、私、これは、譲れないんです。」



綺麗な顔が、歪む。


「お願いします。見逃して、くださいっ!」



バッと頭を下げる緋月ちゃん。


けれど健一さんは、表情1つ変えずに言った。


「そりゃ、無理だ。

そんなん付き合ってたら、犯人は逃亡しまくりだろうよ。

例外は認められねぇ。」


「・・・・・・ッ・・・・・」


緋月ちゃんが、苦しそうに、悔しそうに唇を噛んでいるのが分かる。








―――やっぱり、葉月じゃないよ。


思った。



だって葉月は、警察に捕まるなんてヘマしないし。


苦しさを、悔しさを、表に出したりしないだろうから。