母さんは、虚ろな笑みを浮かべ、幼い俺に、何度も何度も言い聞かせた。
『翼って名前はね。私と翼が、早く死ねるようにつけたの。
早く死んで、早く純白の翼を持つ、天使になれるように・・・って。
ねぇ翼。
お母さんと翼、明日には死ねるかなぁ?
明日には、神様から翼を授けられるかなぁ?
ね、翼。早く・・・・・・この世界から、消えたいね。
天使に、なりたいね―――』
呪文のように。
呪いのように。
毎日毎日繰り返される光景。
―――母さんは、死にたがっていた。
切実に。
虚ろな瞳で。
空虚な心で。
ただ、死だけを望んでいた―――――。



