「散歩に行こっか」


「アンッ!」


ようやく笑顔を見せたあたしに、チビが元気良く鳴いた。


気を抜けばまた泣いてしまいそうになるけど、いつだってあたしを包み込むように傍にいてくれるチビのお陰で、ほんの少しだけ救われたから…。


制服の上からマフラーとコート、そして手袋を身に着け、チビと一緒に家を出た。


まだ17時過ぎだけど、雪が残る今の季節は夕陽が沈み掛けている。


「寒いね〜、チビ」


返事をしないものの、あたしの傍らにいるチビの歩き方はボディーガードさながらの姿勢の良さだ。


その姿が愛らしくて、自然と笑みが零れる。


「あのっ……!」


その直後、背後から声を掛けられ、突然の事に少しだけ驚きながらも振り返った。


「え……?」


目を見開いたのは、不可抗力。


だって、目の前にいたのは先輩だったから。


「突然、ごめん!愛凜ちゃんだよね?俺の事知らないかもしれないけど、俺達同じ高校なんだ。それでさ……」


驚くあたしを余所に、先輩が話を続ける。