あふれるほどの愛を


「おー愛川!具合はどうだ?」

階段に差し掛かったところで声を掛けられた。

「村田…先生。具合?」

「そうだ。三組の長瀬に聞いたぞ?頭痛で保健室行ったって。昨日も体調治らなくて休んだのか?」

えっ?

村田の言ってる意味がわからない。

長瀬…?
坂井と一緒にいた人のことだ。

あっ!あの時、長瀬君が理由つけといてくれたんだ。

「あ、はい。昨日は両親早出で、連絡出来なくて」

「ダメだぞ?本当は注意したいけどな。愛川には借りがあるからな。

言われたよ。校長先生に。愛川が紙留めてくれただろ?こんな量を一日でこなしちゃうなんて尊敬しちゃいますって。

それ聞いたら、愛川たちに申し訳なくなってな。コレご褒美だ。」

そっか、あの日坂井にも手伝ってもらって終わらせた紙の山の事だ。

はいっといって村田が差し出したのは、
どこかのサービス券?見たいのだった。

「ご褒美はいけないと思ったんだが、校長先生の話を聞いてたら、なんか悲しくなってな。三つあるから、愛川と坂井ともう一人誘って行ってくればいい。

その券は俺の親友が働いてるペンションのだ。目の前が海になってて、すごく景色のいいところなんだ。これが俺からのご褒美だ。もうすぐ夏休みだろう?楽しんで来いな」


すらすらと言うから、理解が出来ず…

「えっ?意味が分からないけど」

「大丈夫。さっき坂井に会って話したから。わからないことは坂井に聞いてくれ。まぁ、素敵な思い出作ってな」

じゃーまた!と言って坂井は職員室へと消えて行った。