side優心

坂井の肩によっ掛りながら、あたしは坂井の部屋の中を見ていた。

入る前はシンプルなのかな?って思ってたけど、今目の前に見えるのは、たくさんの家具があって、大きなクマのぬいぐるみなんかもあった。

こんな広い家に一人で居るなんて、すごいな。

あたしだったら、絶対に耐えられない。

坂井は、寂しくないのかな?

あたしにとって、家とは苦しみの場所でしかない。

毎日、嫌味を言われ、一人部屋で声を殺しながら泣くのなんか毎日の日課だ。

でも、誰も助けてくれなくて、今まで一人もあたしをかばってくれた人なんかいなかった。

もちろん味方をしてくれる人だって、いない。

母は、父の味方だし。

父はなんだかんだいって、母の味方をする。

まぁ、もうあいつらに期待するのやめたけど。

期待したって傷つくのはいつもあたし。

家なんか本当は帰りたくなんかない。

だって、自ら地獄に飛び込むのと一緒だもん。

でも、亮がいるから。

亮は知らない。

あたしが両親に言われてること、されていること。

でも、嬉しいんだよね。

「おねーちゃん」って、あたしに駆け寄ってくれる亮が。

「見て見て」って、ニコニコしてる亮を見てると、

なんだか、あたしまで笑顔になれるんだ。