坂井…いや寝ている春樹に今私は抱きしめられている。

暖かい彼の腕の中で私は心までもが暖まっていってることに気がついていた。

誰かを大切に思うこと。

それは私が何年も避けていたこと。

もう、あの日を思い出したくないから。

傷つきたくないから。

同じようになりたくないから。



………だけど本当はこの温もりに触れたかったんだ。

また心の底から誰かを想いたかったんだ。


そういう気持ちが自分の中にあったのに気づかないように無視し続けていた。

そんな私にまっすぐぶつかって来てくれた春樹。


ぐっすりの眠る彼の頭を私はそっと撫でた。

スヤスヤ眠る彼がなんだか愛おしく思えた。



私、前に進むよ。


彼となら前を向いて前に進んでいける気がする。



過去にさよならをしっかり告げることができた。



ありがとう、春樹。