しばらくして、
坂井の声が聞こえないと思ったら、ベッドにおっかかって寝ていた。
自分にかかってた毛布をそっと掛けた。
カーテンを開ければ、星は一つもなくぽつりと月だけが薄暗い空に光ってる
信じることを忘れてしまった。
そんなあたしでも、また信じられる?
頭の中には、さっきの坂井の言葉が離れることはなかった。
“辛かったことが教えてくれたことあるだろ?”
あるわけがない。
あの日からあたしは、怖くなった。
誰かを信じることを、
自分の周りにいる人を失くすことを、
信じて裏切られることを。
わかってる。わかってるよ。
このままじゃいけないことくらい……
誰よりもわかってる。
でも、また同じことになったら、
今度はきっと………。
辛い経験は、人をとことん弱くする
悲しい出来事は、人を臆病にさせる
忘れられない過去は………
新しい一歩さえ踏み出せなくしてしまう。
怖くて、一歩が踏み出せなくなって気づいたら狭い檻のなかにいる小鳥みたいに、臆病になってる。
あたしは、過去を捨てたい。
なかったことにしたいよ……。
そしたら、今よりずーっと楽になれるのに。
もう、あたしはあんな思いはしたくないーーーー………。
ねぇ、人生には意味があるって言うけれど、あたしが苦しんだことにも意味はあるの…?
トンネルに入ったまま抜け出せない。
あたしは、出口のないトンネルにでも入ってしまったのだろうか?

