夜中の3時、気持ち良さそうに寝ている愛華の隣で眠れぬ夜を過ごしていた。
目を閉じるとさっきの光景が蘇ってきて、寝れなかった。
満月があたしを見ているように窓から顔をだしている。
夜起きていると考えなくてもいいことまで考えちゃうから、夜は嫌い。
隣に誰かがいてくれても寂しく思えちゃうんだ。
だから夜はあたしをとことん弱くする。
いつの間にか、窓の外がみるみる明るくなっていく。
ほら、結局寝れなかった…。
気づいたらあたしは愛華の家を飛び出し電話をかけていた。
プルルーー
やけに長く感じる呼び出し音。
お願い……出て……。
「はい」
「坂井……っ」
「どうした?!なにかあった?」
「分からない…。ただ苦しいの…。どうしたらいいのかな…?あたし……いなくなった方がいいのかな…?」
「おい!今どこにいるんだよ」
「んー、風がすごい気持ちいいなぁ…。こんな毎日ならいっそ風に吹かれて遠くに行きたい……ブチッ」
それだけ言って切った。
その後嵐のような坂井の着信があったけど、出なかった。
「もう、どうでもいいんだー」
風に合わせてたくさんの木々が揺れる。
楽になりたい……。
消えてなくなりたい……。
「愛川……っ…」
「坂井なんで…、なんでここにいるの?」
「愛川が呼んだんじゃないわけ?」
「別にー。」
「なにかあったから俺に電話したんじゃねぇの?」
「なにもないよー。ただ電話しただけ。それなのに息まで切らしてくるなんて頭おかしいんじゃない?」
「お前はそういうやつじゃねぇだろ?」
「あたし、わからなくなっちゃってさー」
いきなりアタマをなにかで殴られているかのような激痛に襲われた。
「うっ、痛い…ッ」
「どした?!」
「頭が…いたい」
「俺ん家行くぞ!」
坂井におんぶされて、ただただ肩におっかかっていた。
「しばらく横になってる……」
「ほら、水。冷えピタ貼るか?」
「うん……」
ごめんね…。
あたしはどんだけ坂井に迷惑かければ気が済むんだろうね……。

