「はぁ……」
家に帰ると、ソファーにぐだっと倒れこむ。
幸せなはずなのに、心がモヤモヤする。
好きな女1人守れなくてどうすんだよ。
家族なら気づいてやれよ、察してやれよ
愛川がどんな気持ちで毎日を過ごしていたのか、どんな気持ちでご飯を食べてたか。
そんなことを、思いながら頭には父親の顔が浮かんだ。
‘家族はかけがえのないものなんだぞ
いっぱい笑って
いっぱいぶつかって
たくさん傷つけあっても
嫌いだって思っても
辛いとき苦しいときお前を助けて、味方になってやるのが家族なんだぞ
最後に辿り着くのは家族だ
母さんと父さんはずっとお前、春樹の味方だし、大切だからな
辛くて、周りが見えなくても、自分を見失ってもそのことは忘れるなよ’
昔、小学3年くらいだったか父親とドライブに行ったときに言われたコトバ。
そのときは流してたけど、今になって思い出すなんてな。
父さんにとって大事なのは母さんと春樹、お前だ。
口癖のようにそう言ってた。
だから、思いもしなかったんだ。
そんな家族がバラバラになることなんて。
俺を必要とされなくなる日がくるなんて
明日なにが起こるかわからない。
明日目の前にある幸せが崩れることだってあるかもしれない。
今の幸せが1年後続いてるとは限らない。
人生なにがあるかわからない。
それを感じたのは大切ななにかを失ってから
俺は絶対に愛川を守ってみせる。
人は傷ついた分強くなって、流したなみだの倍しあわせに慣れるって証明してやる。

