春樹side


愛川が気絶した。


あのあと、愛川が気絶したあとおんぶをしながら俺の家に運んだ。


浴衣だし、電車だし、すごく大変だった。



ま、からかった俺が悪いんだろうけど。



好きな女が自分のものになったら、嬉しいじゃん?


しかも、あんな状況で照れながら好きとか言われたら…我慢できるわけがねぇ。



我慢できる男がいるなら、連れて来てほしいくらいだ。



隣で愛川が寝てるけど、俺一晩中我慢できるのか…?



スースー気持ち良さそうに寝ている愛川には俺の気持ちは分からないだろうな。




ベッドの横に座ると、俺もそのまま寝てしまった。




カーテンの隙間から朝日が差し込んできて目を覚ます。



「んー俺寝ちゃったのか」



愛川のほうを見ると、まだぐっすり眠ってた。



「ったく。俺の気もしらねぇで」



まだ6時だし、朝ごはんでも作るか






…………「あちっ!」



ーーーどどドーン


やべぇ…こんな音出したはおこしちゃうじゃねぇか。




こうして出来上がったのは焦げ焦げのベーコンエッグ。



一口食べて見ると


「にげっ」



こんなの愛川には食べさせられねぇや。



捨てるかと思い、ゴミ箱へ捨てようとしたら、タイミングよく?愛川が起きてきた。



「おはよ…」


「おう。体調は平気か?」


「うん!ってそれどうした?」


愛川が指差す先にあるのは焦げ焦げのベーコンエッグ。


「朝食作ろうとしたらこけちまった。慣れないことはするもんじゃないな」



「ちょっと貸して」



いつの間に俺の隣にきてた愛川はベーコンを食べた。


「なにやってんだよ!」


「味付けは完璧じゃん!まだベーコンある?一緒に作ろうよ」



「あるけど」


「じゃ、決まり。手洗って卵とベーコンとパンとってきて」



愛川は手際良く、パンとベーコンを焼いた。


俺は卵を割ることになったけど、ぐちゃっとなってしまった。


「大丈夫だよ。形より味!」



出来上がったベーコンエッグは不格好だけど、色とりよく出来た。




「「いただきまーす」」



さっき作ったやつの何倍もうまかった。



「すげぇうまかった。愛川はいいお嫁さんになるな」



なにげなく言った言葉に顔を真っ赤にする愛川。



「照れ過ぎ。皿洗うぞ」



皿を洗ってる間、愛川は俺をちっともみなかった。



「あ、のさ、あたし浴衣きてたよね?」



「あぁ、それが?」



「これ、坂井の服だよね?き、着替えって…」



「もちろん俺がしたけど?」


「もちろんって…見た…?」



「見た…けど、一瞬だったからな」



「坂井のばかーー!!!」




そう言ってクッションに顔を埋める愛川。



「浴衣で暑そうだったし。それに苦しそうだったからそうするしかなかったんだよ。許してくれるか?」



「やだ」



完全に機嫌を損ねたみたいだ。



「ゆーあーちゃーん」



「……ッ…。そんなことしても許さない!」



「顔上げろよ」


「やだ」


「顔あげねーとキスするぞ?」



俺の予想通り愛川は顔を上げた。



「ごめんな」



「しょうがないから許す」



「風呂はいれば?昨日はいれなかったんだし」



「じゃ、入ってくる」




テレビをみていると、愛川が戻ってきた。



「ありがとう」



「疲れは取れたか?」



「うん!」



「よかった。髪びしょ濡れじゃん!ここ座れよ、俺がふいてやる」



「い、いいよ!!」



「なにもしねぇよ?」



「当たり前でしょ!」



「じゃ、安心して座れよ」




しぶしぶ座る愛川。


わしゃわしゃ髪をふく。




「よし、できた」



「サラサラだぁ〜」



「俺の魔法だな」



「違うと思うけどね」



愛川といる時間はあっという間に過ぎてしまう。



愛川を送り、コンビニによると愛川の父親にあった。



前に、愛川の家に行ったときに会った。


話はしなかったけど、優しそうな雰囲気を放つ愛川の父親。



「こんばんわ」


「あれ?君どこかで」


「優心さんの同級生の坂井と言います」



そう言うと、通りでみたことあると思った。前に会ったよねと笑顔で話しかけて来てくれた。



「あの、お話したいことがあるんですけど…お時間ありますか?」



「いいよ。近くのカフェ行こっか?」



そう言って、近くのカフェに入った。