「うちはここで待ってるから行ってきなよ」
坂井の病室の近くにあった椅子に腰を下ろしながら愛華にそう言われたけど、一緒に行こうと言って病室に向かった。
「本当にここにいるの?坂井くん」
「うん…。」
あたしも何度もここにいなければいいのにって思ったことか。
「坂井っ!」
あたしはいつもこうやって大きい声で名前を呼びながら入るんだ。
もうなんだかんだ習慣になってる。
もし、坂井が起きたのなら声はしなくても物音がするかもしれない…そんな淡い期待もある。
長瀬くんは帰ったのか、静かだった。
「ね、坂井くん事故にあった日から何日眠ったままなの…?」
「明日で10日になる…。数えないようにしてたけど、10日経っても起きないと不安になるよ。もう…目が冷めないかもあっ!!」
「どうした?!」
あたしは顔を歪めた。
思い出したくないのに…。
あたしが信じなくて誰が信じる?
坂井は絶対に目が覚める。
医者が言ってたことは忘れよってあんなに決めたのに。
不安で不安に押しつぶされそうになる。
「坂井は目を覚ますよね?また笑ってくれるよね?ねぇ!」
うんって力強く言ってよ。
あたしはただ誰かに大丈夫、起きるよって言って欲しいの。
どうして……?
みんなそんな悲しい顔するの?
あたし、やっと自分の気持ちに気づけたのに…なんでどうして伝えられないの?
誰か、助けてください…。
あたしはどうなってもいい。
坂井が助かるならなんでもする。
どうか神様…助けてください……。

