「優心ちゃん!」

「へっ?」

「どうした?さっきから上の空だけど」

「ううん、なんでもない」


なんで長瀬くんはあんなこと言われたのにそんな元気でいられるの?


「春樹のこと?」

「えっ?」

「聞いた?先生から」

「うん…」

「そっか。信じたくねぇよな、あいつがもう目を覚まさないかもしれないなんてさ」


「……。ねぇなんで笑ってられるの?坂井もう目を覚まさないかもしれないのに」


「俺さ悲しんでたら、なんか春樹のこと悪い方に考えちゃってさ。だから笑っていることにしたんだ。今俺ができることは春樹のそばにいてあげることしかできないからさ」


「たしかに長瀬くんのいう通りかも」


「だろ?優心ちゃんちゃんと寝ろよ?」


「へっ?」


「くーま!できてる」


「うそ?!」


「ほんと。春樹の心配するのもいいけど自分の心配もいなよ?か


「あたしが倒れても誰も困らないし」


「またそう言うこという〜。俺困るし。ま、優心ちゃん倒れれば春樹パッと目覚ますな」


「冗談ばっかり〜!
あのさ、坂井の両親来てないよね?」


「あー来ないだろうね。なんで?」



「いや、毎日言ってるけどあったことないからさ」


「ケータイに入ってないから、電話番号。」


「どうして?」


「前に言ったとおり。いないものだと思ってるから。親のこと」


「そうなんだ…。あたしなにもできないな。力になることも。結局あたしは坂井になにもしてあげられないんだ。助けてもらってばっか」


「変わったな、優心ちゃん」


「なにいってんの!」


「表情が柔らかくなったし、なにより雰囲気が優しくなった。変わったのは自分が気づくんじゃないからな。周りの人が変わったっていうならそれは本当に変わったってことだ」



「雰囲気が優しいって?」



「俺なりには丸くなったって感じかな」


「ありがたくもらっとくね」


「おう!」


「じゃーね!」


「待って優心ちゃん!お昼一緒に食べようぜ!屋上集合なっ」


にかっと笑いあたしの返事も聞かずに教室に消えてった。