どうして…?


坂井の姿は放課後になっても見つかることはなかった。



「昨日楽しみって言ってなのに…坂井のばかっ!」




「優心ちゃん!」


肩をトントンと叩かれて目をうっすら開ける。


ぼんやりとした視界に写ったのは焦った顔をした長瀬くんだった。



「長瀬…くん…?」



「そー。大変なんだよ!春樹が、春樹が!」



「坂井がどぉしたの?」



「春樹が、事故にあって意識不明の重体だって、さっき俺のケータイに電話あって」



こんな慌ててる長瀬くん、はじめてみた…ってそんな場合じゃなーい!



「早く行こ!どこに入院してるの?」


「○○△△病院」


「はやく、行かなきゃ!」



あたしは固まっている長瀬くんの手を取り、病院に向かった。




「あいつ、もしかしたら、もしかしたらだけどよ、自分から道路に入ったかもしれねぇ」



「えっ………」



「前もあったんだ。こういうの。最近あいつの態度おかしくねぇか?空見上げてさ。親となんかあったんじゃねぇかな」



「あたし、昨日だって話しててそばに居たのになにも気づけなかった…最低だ…。」



「いや、でも、あいつは変わったんだよ。優心ちゃん、っていう存在ができてから」



あたしの存在…?



「いや、俺の口からはいえねぇけど、もうそんなことしねぇよ、春樹はさ。守りたいやつができて強くなったからな」



「長瀬くん…あたしにできることは?坂井にあたしができることってなんだろ?」



「ぶつかることかな。優心ちゃんが心友ちゃんとあったときさあいつはなにをした?ぶつかってきたんじゃねぇの?」



「あたしが坂井を傷つけることは?」



「ないない。絶対ない」


「着いた」


まだまだ話したいことがあったけど、タクシーを降り、坂井のいる病室にむかった。



「坂井…!」


もちろん返事はなく…。


病室は誰もいなく静かだった。