「なんであたしなの?なにも出来ないよ」



そう言うけど長瀬くんはなにも言わずに前だけを見て歩いてるから、あたしは止まった。



それと同時に長瀬くんの足も止まる。


「あたしなんかより、長瀬くんのほうが長い期間一緒にいるし坂井の事分かってるはずなのに…どうして」



「だからじゃない?」


「えっ?」


「俺はずっと春樹を見てきた。でも、今は俺が出る幕じゃない。優心ちゃんしかいないんだよ、あいつを助けてられるは」



「行くよ」と付けたして、また歩きだした長瀬くんを小走りで追う。



「春樹の事でなんかあったらいつでも連絡して」


「うん。ありがとう」


「いーや。じゃあね」


気付けばもう家の前に居て。


長瀬くんは大きな手を振ってきた道を戻っていった。