長瀬くんの話しはこうだった。
坂井が物心ついたときは、夫婦間が覚めきってたらしい。
朝から、喧嘩ばっかりで。
それでも、坂井は両親のことが大好きだったから、喧嘩はやめてっ!て何度も間にはいったけど、坂井はいつも邪魔と言われ続けられた。
それでも諦めなかった坂井だったんだけど、中学にはいったと同時に両親が離婚した。
離婚が決まっても、考え直して!と何度もいったみたいだけど2人とも聞く耳を持たなかった。
「ここまでは春樹も平気だって顔すんだけど、問題はこの先ね。その離婚が決まっても喧嘩は収まらなくて今度は、春樹をどっちが引き取るかって言う問題になったんだ。それで…母親は父親の方がいいだろうって言って父親は、母親は大事だろとか言ってさ。その会話をこっそり聞いてた春樹は、『俺は親にとっていらない存在なんだ』って思うようになったんだ」
「それで、何日たってもどっちが引き取るか決められなくて、春樹は家を飛び出したんだ。で、今1人でマンションにすんでるってこと」
「そんなことがあったなんて…」
「あぁいうことがあってから、自分に自信が持てないみたいでさ、親のチカラってすげんだよな」
親の力……
親が与える力はすごいとあたしも思う。
親が大丈夫と言えば、なぜか大丈夫って気持ちになれる。
坂井もそう。
両親が自分を選んでくれなかった。
自分のいうことも聞いてくれなかった。
そういうことが、坂井の自信をなくさせてしまったんだろう。