あふれるほどの愛を


愛華が角に消えてくのを見送ってから、もう10分もたったっていうのにまだあたしは玄関の前にたっていた。


なんか、どうしても家に入りたくない。


くるっと、玄関を背に向けて来た道を戻りはじめた。



少し歩いて辿り着いたのは、いつもの公園。


なんかあるときって、自然にここに足が進むようになってるみたいだ。



「はぁ……」



大きなため息は、誰にも聞かずに空に消えていく。



「優心…ちゃん?」


そんな声が聞こえて振り向くと上下ジャージ姿の


…長瀬くんがたっていた。



「どうした?こんなところで」

夜の寂しい公園に1人でいるあたしに近づいてくる長瀬くん。

「休憩してるだけ」


「そっか。俺は見ての通り部活」


「お疲れだね」


「そ。優心ちゃんはショッピング?」

ベンチにショッパーがあちこちにあればそう思うよね。


「うん」


「春樹と?」


「違う。と、友達と」


「そっか。楽しかった?」


「うん…。あたしが友達ってなんか変な感じ。あたしには、友達いないし」


「友達と遊んで来たのに、友達がいないわけないでしょ?」



ね?とあたしの目を見る。



「そうは、そうだけど…。なんか違うような気がする」


「意味深な言葉だな」



「もう、頭の中ぐちゃぐちゃ」



「見てればわかるよ。顔に出てるから」


そう言われて、無意識に手で頬のほうに触れる。



「そっくりだよ。……っよ」


一瞬強い風が吹いてきて、長瀬くんの発した言葉が聞こえなかった。


「えっ?」


「昔の春樹に、そっくりだから、分かるよ」


「そっくり?あたしと坂井が?」



意味がわからず、ぽかんとしてしまう。