「ぐすっ」

洋服の袖でそっと涙を拭う。

そしてまた続ける。


「思い出しても悪い思い出なんてなくて。あの時からあたしの人生おかしくなったのに。ずっと憎んでたのに。愛華に真実聞いて謝られて少し揺れたんだよね、あたしの気持ちが。この前会う前に誓ってた。愛華にどんなことを聞かされても、許さないって。でも、その気持ちが少し揺らいじゃった。だからっていってすぐには許せない。離れてた時間も、あたしの傷ついた心も簡単には埋まらないよ…っ」

一度零れた涙は止まることを知らない。

「うーっ」

ぼやけた視界に見えたオレンジ色をしたなにか。

「はいっタオル!!」

なにも言わずに差し出されたタオルを受け取る。

「そうだよね。心の傷も時間もすぐには埋まらないよね…っ。優心の気持ち話してくれてありがとう」

鼻をすする音がして、前を見ると愛華が泣いていた…。