「あたしはやっぱり必要とされてないんだよ…」
「ばっかだな。愛川の何処が必要とされてないんだよ。お前は周りが見えてねんだよ。なんで隣にいる俺の存在が見えねんだよ!!愛川がまわりを見ないだけだろ?わざと見ないんだろ?なんでそんな自分の存在を否定すんだよ!必要とされない奴なんてこの世にいないんだよ!」
「いたら?」
そう言うと、坂井の顔が怖くなった。
「マジで言ってんの?!俺だってな!苦しかったこと、つらかったことあんだよ!生きてたってつまんないって思ったことなんて数えないくらいある。このまま消えてなくなりたいって思ったことある。だけどな…今は生きててすごく楽しいんだよ。こんな日が来るなんて思わなかったほどすごく楽しい。優斗に出逢えた。愛川にも出逢えた。それで思ったんだ。生きてて良かった。こんなに幸せなことないって思った。誰かと一緒に笑えて泣けることがこんなに幸せなんだって。それを愛川にも分かってほしいんだ」
「………」
坂井も昔、何かあったの?
あの笑顔の裏には、やっぱりなにかあるの?
だから、悲しい顔をしているの…?
空を見上げる坂井の瞳にはうっすら涙が溜まってた。
だけどあたしは見てないふりをした。
――――……なんか触れちゃいけない気がしたんだ。