あふれるほどの愛を


「でもさ、分からないんだよね、なんかさ」

ボソッと独り言のように言ったのに坂井は言葉を返してくれた。

「そりゃそーだよな。自分のことを嫌いになったと思ってた相手からそういうこと言われたら誰だって戸惑うし分からなくもなるに決まってるだろ。特に愛川の場合な」


「へっ?どういうこと?」

間抜けの声を出す。

だって、坂井の言ってる意味が分からないんだもん!

「ずっと引きずってきたんだから、まだ好きだって言われたってそのまま信じられるか?信じられるわけないだろ。愛川の中にはその子に対して疑いっていう感情を持ってる。人は一度でも信じてた相手から裏切られたらその人にはもちろん、ほかの人にも不信になるはずだ。だから愛川も今まで人と関わろうとしなかった。それは裏切られるのが怖かったから。裏切られてたくさんのものを失うことになったから、もう二度とそんな想いしたくなかったからだろ。違うか?」


あたしの方をまっすぐ見て問いかけるもんだからあたしは俯きながら、「違くない…」と答えた。


「そうだよな。本当は一人はいやだ。一人になりたくない。誰かと一緒にいたいと思っても蘇るのは裏切られて傷を負ったときの自分。また誰かを信じて裏切られて一人になるくらいならはじめから一人でいいって、思ったんだろうな。淋しかったよな。今まで“2人”でいた。一人じゃなかったのに、いきなり一人になったら、誰だって淋しいだろ。周りには笑い合ってる仲間がいて。そんなのを近くで見てて悲しくなったことがなかったってことはないと思う。自分たちに合わせてみちゃうかもしれない。前に愛川言ったじゃん?『1人には慣れてるから』って。でも、それは嘘だよな?1人なれるやつなんて世界どこ探したって居ないと思う。それでも愛川が一人に慣れたって言うならそれは自分で思い込んでるだけ。だって誰にだって『1人になりたくない』って想いはあるんだから」


そういう間も坂井はあたしをまっすぐ見てて。

それはあたしを逃さないように。