坂井はさっきからずっと、マジかよを繰り返している。
そんだけ嬉しいの?と突っ込みたくなるくらいだ。
「ありがとな」
気のせいかな…?
そう言う声がかすかに震えてるのは、鼻をそそる音が聞こえるのは。
…まさか
「坂井、泣いてるの?」
返事はなくて、変わりにポタッと涙があたしの肌に落ちた。
…やっぱりないてるんだ。
さらに、まだギュッときつくなるあたしを包んでる腕。
「なんで、なんで、なんで」
あたしのためなんかに涙を流すの?
男の子が涙を流すなんてドラマでしか見たことない。
男の子は強いっていうイメージが強いから。
静かに泣いてるのを聞いてるとあたしもなんかこみ上げて来て。
我慢したけど、あふれてきた涙。
声を殺して泣いてたけど、しまいにはおお泣きしてしまった。
そんなあたしを見て、愛川まで泣くなよと坂井の手で涙を拭かれたがまた流れてくる涙。
嬉しかったんだ。
こんなあたしでも、あたしを思って涙を涙を流してくれる人がいたなんて、そう思ったらあふれてくる、頬を流れる涙。
それは、久しぶりに流す“うれし涙”だった。

