「それより、これ……」
スッと羽織っていたカーディガンのポケットからあるものを取り出して掌に置いて坂井に見せた。
「なんでこれ…お前がもってるんだ?」
普段は、あたしが今持ってるあるものを坂井は制服のズボンのいれているみたいだから、あたしが持ってることに驚いてるよう。
「落としたの気付いてなかったんだ」
「あの日、あの時、あたしが坂井に…嫌い…って言った時に病室の前に落としていったんだよ」
「愛川が俺のこと嫌いって言ったの聞いたこと知ってたんだ…」
「あれ、聞いたから退院の時来づらかったんでしょ?それくらいあたしにだってわかる」
「嘘だって、冗談だってって思ったけど。優斗からもそうだって言われたけど、そう思えない自分もいてさ。だって俺愛川にやだって言われても、なに言われても愛川の事色々してたからさそれほんとは愛川からしたら迷惑なことだったのかなって思ったら、今までの自信が全部すっ飛んじゃってよ。情けないけどさ」
そう話す坂井は遠くを見つめたり、あたしの顔を見たり。
もしかしたらあの時の事を思い出してるのかもしれない。
あたしが言った『大嫌い』という言葉を。

