その反動で坂井はふらっとはしたが、倒れることはせず、また態勢を整えた。
「いつ、俺が同情したんだよ?俺はお前をちゃんと見てるんだよ。そして助けたいと思ってる。同情なんかじゃねーからな」
「………」
「信じろよ、俺を……」
その声は少し震えてたことにあたしは気付いた。
こんな声、聞いたことない…。
――ドクン
なんかそんな声を聞いたら、胸がズキンっと痛んだ気がした。
どうして、なんで痛んだのか分からなかったけど。
「でも、一つだけ愛川に謝らなきゃいけないことがある」
「やっと…愛川って呼んでくれた」
「…えっ?」
「だって坂井、さっきからあたしのことお前としか呼ばないんだもん」
「そういうことか。何度でも呼んでやるよ、愛川ってさ」
「うん…で、謝らなきゃいけないことって?」
「あぁ。退院の日行けなくてごめんな」
そう言ってポンポンとあたまを叩く坂井。
その手は、すごく優しくて。
それだけで涙が出そう。

