ーードン
大きな音を立てて坂井の腕があたしの頭の上に置かれあたしは逃げ場を失う。
それはもう、俺から逃れることは出来ないと言われているよう。
「な、なによ」
「もう、ここから逃げられない。
俺を蹴ってでもここから逃げ出す?できるもんならやってみれば?」
出来るわけないじゃん。
あたしの気持ちを分かっててそう言うんだ。
女のあたしに男の力には、叶うわけがない。
それを分かってて言ってるんだ。
「逃げないんだ?」
「なに?逃げて欲しいわけ?」
「いや。いつものお前なら逃げると思ってさ」
「逃げ出そうとしても、どうせ逃がしてくれないでしょ?」
「当たり前。今お前のこと離したらやばい気がするから」
「…それってさ、なに?あたしが消えるかも知れないからってこと?それは同情…?」
「は?俺がお前のこといつ同情した?」
「あたし、どうされることが一番嫌いなの。同情ならあたしにはもう関らないで!!」
そう言うとありったけの力で目の前の坂井の胸を押した。

