あふれるほどの愛を


知ってるよ。

あたしが自分自身から逃げようとしてることくらい、自覚してる。

「べつに逃げることは悪いことじゃないから」


「なんでも、そうやって逃げるんだ?
自分からも、俺からもな。
ま、俺から逃げようとしても俺は逃がさねーけど」

そう言ってあたしに近づく坂井。

あたしと坂井の間には距離が結構あったのにどんどん近づかれてもう、坂井は目の前。

あたしも後ろに足を進めるが、壁に当たってしまう。


……もう、あたしは逃れられない。


目の前の坂井から。