あふれるほどの愛を


そして気付いたら川辺があって、その中に入ってた。

激しくなってく川の流れをぼーっと見てたら『愛川!』ってあたしを呼ぶ声が聞こえたんだ。


なんで、こんな時に坂井の声が聞こえたのか全然わからなかった。

もしかしたら、幻聴が聞こえたのかもなんて思ったそのとき、あたしを呼ぶ声がはっきりしてきて…

気付いたら坂井の腕の中にいた。

離そうとしたけどびくともしないあたしを包んでる腕。

それは、あたしを優しく包み込んでた。


そんな坂井を見ていると思う。

なんであたしにここまでするんだろうって。

だってあたしひどいこと数えきれないくらいしてるんだよ。

なのになんでそこまでされて関わるんだろうって。

あたしが離そうとしてるのに、ちっとも離そうとしてくれない。

そんな坂井の真っ直ぐな気持ちにたまに
折れそうになっちゃう自分がいや。

あんなに、固く閉じた心の扉が坂井の手で少しずつ開かれてる気がするのはあたしの気のせい…?


…たぶん気のせいなんかじゃない。


少しずつだけど、確実に開かれていってる。