あふれるほどの愛を


坂井には悪いけどあたしに生きる意味はない。

入院中、一度も来なかった人たちがいる。

それは、両親だ。

ほんの少し心の隅にだけど思ってたんだよね。

…来てくれるって。

だけど、来なかった。

ほらね?信じたって自分がばか見るだけ。

こうやって何回も経験してんの。

だから、言い切れるんだ。

おばあちゃん家に帰ってから聞いた話なんだけど、

おばあちゃんはあたしに内緒でお母さんに連絡したらしい。

そしたら、「ふぅ~ん」とだけ言ったらしい。

自分の娘が倒れて病院に運ばれたのに「ふぅ~ん」っておかしくない?

普通のおやだったら、すぐ病院に駆けつけるよね?

もし、自分が母親の立場だったら、やってることすべてほったらかしにしてでも駆けつけると思う。

だって、自分の子供だよ。

大切だったら、大好きだったら、すぐにでも駆けつける。

でもそれをしなかったってことは、あたしの事をなんとも思ってない証拠。

そのことを聞いた瞬間、自分の中にある何かが切れる音がして、気づいたらあの場所に行っていた。


__坂井と行ったチューリップ畑に気付いたら足が動いていた。