気付いたら、瞳から涙が零れていた。
泣いて居ることを誰にも気付かれないように、走り出した。
廊下を走り抜け、階段を登った。
ドンッーー
涙で滲んで、前が見えなかったせいか、誰かにぶつかってしまった。
「ごめんなさい」
「だいじょ…って愛川⁇」
えっ?あたしのこと知ってる?
顔をあげて見ると、朝見た顔があった。
「えっ?坂井?」
「なんで愛川がここに?」
「…………。」
何も言えなかった。
だから、聞き返すことしかできなかった。
「なんで坂井がここに?」
「話返すなよ。俺らは音楽室。一時間目は音楽だから。」
おれら?
視線を上に移すと、一人、男の子が立っていた。
その男の子を不思議そうにじっーと見ていると、
「こんにちは」
ニコッと笑顔で言われてあたしは目の前の光景にびっくりした。

