あふれるほどの愛を


あたしは、ぼやけた視界のなかで手を見つけ力なく握る。

それと同時に聞こえる大きな声。

「優心ちゃん!優心ちゃん!」

「いたっ」

あたまを上げようとすると激痛が走った。

「無理しちゃだめだよ」

声がするほうへゆっくり顔を向けると白い白衣を着た男の人があたしのほうを心配そうに見ていた。

「ここどこ?」

「病院。車の中で倒れたんだよ」

車の中、、、?

「あぁ!!」

「思いだした?」

「っはい」

あたし銭湯で女の人に。

「私は優心ちゃんの主治医」

「でもよかった。目が覚めて」

その主治医の隣にいた看護師さんがそう言う。

ん?目が覚めてって?

「不思議そうな顔してる。優心ちゃん倒れてからもう5日経ってるのよ。その間ずっと寝てたんだよ、優心ちゃん」

「う、そ…」

「本当。念のためあと1日入院だからね」

ニコッと先生にされて頷くあたし。

「よし。あとお礼するのよ、お姉さんに」

先生はあたしの後ろを指さす。

「あ!この人?!」

忘れるわけがない。

「ずっと、そこから離れないのよ。心配だからって帰ってって言っても帰らないの一点張りで。あなたがよッぽど大切なのね」

そう先生の隣にいた看護師さんが付け足す。

「初対面なのに……」

「なんか言った?」

小さくつぶやいたあたしの声は聞こえなかったみたい。

「いいえ。ありがとうございました!!」

「安静にしてね」

そう残して病室から出て行った。