ーーガチャ
「坂井お待たせ」
「以外に早かったじゃん…ってか、髪びしょびしょじゃんかよ」
「だって、坂井が待ってるかなーって思ったから!」
「なんだよ。俺のため?
でも、髪はちゃんと乾かさないと風引くぞ?はい、戻って戻って」
人のことをからかったと思ったら、坂井に後ろから肩を持たれ、お風呂に戻されてしまった。
「愛川はここに立ってるだけでいいから」
そう言われ、あたしは今は鏡の前にいる。
誰かに自分の髪を乾かしてもらうなんて、はじめてかも。
「愛川って髪の毛なんかしてるの?すごいサラサラ」
「なんもしてない。髪にはあんまり手かけてないからさ」
何気無い会話。
そんな会話さえもすごくかけがえのない時間に思えて来る。
「坂井、ほんとに今日はありがとう」
気づいたらあたしは坂井に向かってそう言っていた。
「今日は愛川にお礼言われてばっかな気がする」
「そう…かもね。だって、すごく楽しい日だったから素直に慣れちゃうのかも。最後にもう一回」
たくさんの感謝の気持ちを込めて、
“ありがとう”
と坂井に笑顔で言った。
「そう改めて言われると、恥ずかしいな。でもこちらこそありがとな愛川」
坂井の笑顔。
今日の笑顔は、いままで見てきた笑顔より、1番輝いて見えた。

