「落ち着いた?」

「うん、ありがとう」

「いいのよ。でも一つ聞いてもいい?」

麻衣ちゃんの遠慮がちの質問にあたしは頷く。

「嫌なこと思い出したって家族とか?」

えっ…
麻衣ちゃんはあたしの心が見えるの?

「なんでって顔してるね。優心ちゃんの行動見てたらさそうかな?って思って。
だって、優心ちゃん家族で来てる人見たら悲しそうな瞳するんだもん。だから家族となにかあるのかなって思って。ごめんね…嫌な気持ちにさせたら。

でもね、私は優心ちゃんが辛い思いするのは嫌だから」

あたしは麻衣ちゃんの言葉になにも言えなくなってしまった。

しばらく沈黙が続く…

「ごめんなさい」

沈黙を破ったのはあたしだった。

あたしの発した言葉に麻衣ちゃんは戸惑いを隠せない様子だった。

あたしは深く息を吸うと、口を開いた。

「あたし、人が怖くて…心を開くとか自分の胸の内を話すとか怖いの。人が信用出来ないの」


「そっか。話してくれてありがとね。人に自分のこと話すのってすごく大変なことだと思うんだ私はね。だって、そこで話して周りに言われたりするかもじゃん?怖いよね。優心ちゃんの気持ち分かるよ。

でも、心を開いてる人いるんじゃない?優心ちゃんのすぐ近くに」


「え?」


「気づいてないのか。あたし今日ずっと優心ちゃんといて、春樹くんといる優心ちゃん心開いてるように見えたんだよね。違う?」

そんなこと思ったこともなかった。

だって、坂井とは最近会ったばっかだし…

「でも、あたしは坂井に自分の気持ちいったことは…」

「ない?」

うんと言う代わりに、あたしはコクンと頷いた。

「まぁ、心を開くと言うのは自分のことを話すだけじゃないんじゃない?例えばだけどさ、一緒にいてどんなことでも言い合える、ありのままの姿でいれるとかさ。そう考えると春樹くんといる優心ちゃんは心開いてるんじゃない?」

「どうだろ?わかんないや」

「そっか。ごめんね、変なこと聞いて」

「大丈夫だよ、あたしこそごめん、答えでなくて」

ニコッと麻衣ちゃんは笑って「いいの!」と言ってくれた。