力なく、顔を上げた。

そこに居た男は見たことある男子だった。

電気は付いてなく、真っ暗だから、顔ははっきり見えなかった。

「あ、なた、誰で、す、か?」

泣いたせいで、声が出なくて区切り区切りで聞いた。


「あっ、俺は、3組の坂井春樹。よろしく。」

えっ?

坂井って人気者の?

私が戸惑ってるうと…

「こんなときに自己紹介してる場合じゃないよな。」


と言い、なんか制服のズボンに手を入れて、ゴソゴソと何かを探していた。


私は何をやってんのか分からなくて、頭の中は、???でいっぱいだった。


「あった!」

と言って彼があたしに手渡したのは、

ハンカチだった。

「えっ」

あたしはびっくりして、その場にかたまっていると、

彼の手が伸びてきて、あたしの手をつかんだ。

あたしはびっくりして、手を放そうとしたけど、彼の力は女のあたしには当然かないっこない。

「いいから、受け取れって」

さっきから変な態度をとっているあたしに、彼は無理やりあたしの手を取って、無理やり持たせた。

「それじゃ、もう役には立たないだろ」

彼は、あたしが持っていたタオルを指さして言った。
あたしはタオルに視線を移して触ってみると、彼の言う通り涙でびっちょりになっていた。

「あっ…」

「だろ?だから俺のタオル使えって…な?」

彼の言葉にあたしは素直にコクンと頷いた。