「麻理菜……」
『ん?』
彼は弱々しくあたしの名前を呼んだ。
『あっ、もしかしてあたしが泣いちゃったから泣くにも泣けなかった?』
あたしがふざけて言うと、宙は真剣な眼差しでこちらを見つめた。
ふざけるのを止め、あたしも応えるように宙を見つめた。
宙は一呼吸置き、口を開いた。
「俺……まだ隠してることあるんだ……」
そう言って宙は目をそらした。
まだ何かあるの?
女嫌いは知ってるし……。
なんだろう……。
考えても分からない。
だけど安心して……?
あたしはあなたから離れたりしないから―……。
あたしは静かに自分の手を宙の手にそっと重ねた。

