― カランカラン――…


「いらっしゃいませ」


ペコリと頭を下げたその女性客は、高校生くらいだろうか。


“女性”と言うよりも、“女の子”と表現する方がきっと正しい。


あたしよりも少しだけ背丈の低い彼女は、店内をキョロキョロと見渡した。


「あの……」


「はい」


「ここって、お客の要望に合わせた本をオススメしてくれる、って聞いたんですけど」


「えぇ。お客様が望まれた場合、そのようにさせて頂いてます」


「あの、じゃあ……元気が出る本って、ありますか?」


「フフッ、もちろんですよ。うちはそんなに広くはないけど、お客様に満足して頂ける品揃えが自慢なんです」


冗談めかして笑ったあたしに、彼女は緊張が解れたように微笑んだ。


「では、こちらに座って下さい」


「え?」


店内の端にある小さなテーブルに、彼女を案内する。


「うちでは、まずお茶を飲んで頂くんですよ」


フワリと微笑んで、温かいカフェオレを淹れた。