優しい爪先立ちのしかた





翌朝、朝食を食べ終えた栄生と梢は帰る支度した後、部屋を出た。

「星屋に会った後、親に挨拶してくる」

「はい」

「ついてこなくていいから」

ついて来ようとした梢を見て、言葉を吐く。

「え」

理由も言わず、栄生は行ってしまう。
そこには感じたことのない壁。

栄生は栄生で、尾形の話を梢に聞かせたりしたくなかった。

尾形の為にも。

遠ざかっていく背中を見て、梢は小さくため息を漏らした。