「悪かったわね」

「まぁ、そう拗ねんなって。
悪く言ってんじゃねぇよ」

「それが悪口じゃないなら、あなたの悪口は相当酷いものになるわね」

ジルはそう言ってぷいっと顔を背けた。

クックッと笑うロイの声が聞こえる。


「で、何だよ。付き合いが長すぎるってことで何か問題でもあるのか?
まさか、パートナー解散しようとしてるとか?」

「え…?
そういう訳じゃ……」

ジルは言葉を噤んだ。

そういうつもりじゃない。
ただ、この事件が起きる前に、一人で旅立とうとしていたのは事実だ。


ローグとの付き合いは長い。
あれから何年が過ぎたことだろうか。

もちろん出会ったことには感謝をしている。

ただ、最近の自分は変だ。

ローグに対しての複雑な想い。

自分でもよく分からないが、彼のことを考えると、ドキドキしたりイライラしたり。
何だか妙に落ち着かない。

リィズ村で一人過ごした日々も、一人で悩んだものだ。


だから、とりあえずこの変な自分が落ち着くまで、一人で修行に励もう。

そう決めたのだ。

そう決めたはずだった。